【出口博之のロック特撮】眠れる才能が目覚める!?怪獣と過ごす芸術の秋

2014/11/17 11:30


こんにちは、白ポロ+眼鏡でおなじみのMONOBRIGHT、ベースの出口です。秋の夜長、読者諸兄の皆様はいかがお過ごしでしょうか?

秋といえば農作物の収穫時期ですので「食欲の秋」と言いますし、夜が長くなって感受性が高まり思慮深くなる事から「芸術の秋」とも言われます。そんな今回は怪獣図鑑とフィギュアを傍らにおいて「怪獣の芸術ポイント」に思いを馳せてみたいと思います。秋の夜長、今一度怪獣達をまじまじと観察すると、今まで気がつかなかった自分の中の美的センスが突然開花するかも知れませんよ!

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■怪獣かくあるべき。怪獣芸術の原点とは

怪獣と言えば1954年に「特撮の神様」円谷英二監督らによって生み出された、世界にその名が轟く怪獣 ゴジラです。その威風堂々とした佇まいは後に数多く生み出される怪獣達のひな形になる程、この時点で完成されています。

巨大なトカゲ、あるいは恐竜に近いデザインですが「人間臭さ」も魅力のひとつにあります。山の向こうから、ビル群の間から現れ、こちらをギロリ!と睨む一連の所作は、日本の伝統芸能である歌舞伎の見得(みえ、と読みます。「ィヨーッ!」というやつです)にも通じる息をのむ格好良さがあります。

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*画像出典:Amazon

ギロッと睨む所作に共通項を見いださずにはいられません。

懸命なる読者諸兄は既にご存知と思いますがゴジラは当初、ゴジラの模型を1コマずつ撮影して動かすストップモーションでの撮影が検討されていました。しかし、時間がかかり過ぎるため「着ぐるみ」での撮影に切り替えられました。「人間が動かす」怪獣。この方法こそが、ゴジラ、ひいては怪獣が今も愛される由縁であると思います。ずっしりとした重量感、千両役者の風格漂う巨大生物としての息づかいが「これぞ怪獣」という王道の格好良さです。

全ての原点はここにあると言っても過言ではありません。

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■王道に対するカウンター勢力。新しい造形の誕生

ゴジラが誕生してからしばらくの間、怪獣は銀幕の中の存在でしたが、円谷プロの手によって怪獣はテレビ(お茶の間)に活躍の場を移しました。毎週新たな方法論によって生み出される、エポックメーキングな怪獣達。

ですが、準備期間が潤沢にある映画業界に比べ、テレビ業界は放映が始まると準備期間が限られてきます。時間がないからといって王道の焼き直しでは食傷気味になってしまうし、何よりクリエイティブではありません。常に新しいアイデアとモチーフの模索が重要課題となります。締め切りと作品クオリティのせめぎ合い、時間との戦いです。この矢継ぎ早なサイクルにより、これまでには無かったジャンルの怪獣が生まれ始めます。

その新しいジャンルが実を結んだのは、1972年に放映されたウルトラマンエース」です。怪獣を超える存在「超獣」が現れます。過剰なまでにケバケバしい体色、意思疎通を完全に否定する様な眼光、破壊にのみ特化したデザイン。禍々しさの中に漂う歪な美しさが、王道タイプの怪獣には見られない妖しくも煌びやかな魅力を放ちます。

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■先入観を捨てよ。心の目で見る怪獣芸術

おおよその芸術は「破壊」と「創造」によって生まれます。怪獣も然り、街を破壊し、文字通り自らも破壊され、また新たな怪獣が生まれます。芸術のセオリーにきちんと則っています。

ですが、この破壊と創造が極端過ぎて、突き抜けた存在感を放つ特筆すべき怪獣が2体います。それが、四次元怪獣ブルトン(ウルトラマン第17話「無限へのパスポート」に登場)。そして、光怪獣プリズ魔(帰ってきたウルトラマン第35話「残酷!光怪獣プリズ魔」に登場)。

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*画像出典:左=Amazon、右=知人提供

左が「ブルトン」、右が「プリズ魔」。怪獣芸術における「抽象画」とでも言いましょうか。考える事自体がナンセンスと思わせる、哲学者にも近い風格があります。

この2体は巨大生物の威厳と格好良さを持つ「王道怪獣」、凶暴性と何故か惹き付けられる妖しい魅力に溢れた「超獣」、どちらの要素も全く見受けられません。私達が抱く「怪獣かくあるべき」の考え方を木っ端みじんに破壊するほどのインパクトを与えてくれます。

デザインモチーフを予想するに、ブルトンは心臓、プリズ魔は結晶体、と見るのが妥当かと思います。しかし、考えれば考えるほど「その予想に何の意味があるのか?」と禅問答の様な問いかけが聴こえてきて、私達の心はかき乱されます。ちなみに、この2体は驚くほど強い怪獣です。ウルトラマンが殆ど有効打を繰り出せないほどの苦戦を強いられますので、できれば映像でご確認頂けたらと思います。

話題が脱線してしまいますが、個人的にこの2体の怪獣の存在感は、イギリスのロックバンド「Led Zeppelin」が1976年に発表した傑作アルバム「Presence」のジャケットに描かれている「黒いオブジェ」を彷彿とさせます。

心穏やかに向き合うと何かが見えて来る…かもしれません。

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*画像出典:Amazon

そう、この「黒いオブジェ」にはとんでもない秘密が隠されています。この正体を知った時、あなたは芸術の深淵を覗く事になるのです。

いかがだったでしょうか?

今回取り上げた怪獣は「探しやすさ」「面白さ」「作品の歴史」諸々を鑑みてチョイスしました。おおまかに分類しましたが、他にも取り上げたい怪獣が、まだまだ、文字通り山ほど存在します。泡沫の如く消えていった怪獣の中にも、よく見るととんでもない魅力を秘めたものもいるかもしれません。

芸術とは「自己解釈の面白さ」だと思います。秋の夜長は怪獣図鑑や実際の映像を見ながら、お気に入りの怪獣を見つけるのもまた一興ではないでしょうか。

(文/MONOBRIGHT・出口博之

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